【ATD23】L&Dプロフェッショナルに求められているビジネスへの関わり方とは

ATD
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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ATD23で参加したセッションの中で、気づきを得た・共有したいと思った点についてあげていきたいと思います。

今回は、「L&Dプロフェッショナルに求められていること」が、研修企画やタレントマネジメント実務だけではなく、別のステージに移りつつあることを、いくつかの参加したセッションの内容をふまえて述べます。

最終的に到達すべきビジネスゴールを明確にする

最終日(5月24日)の朝一に参加した「Success Metrics for L&D」は、研修担当者が必ず経験したことがある、「XXに関した研修をやりたい」という現場部門の「リクエスト」をもらった時に、どうやって「ビジネスゴール」を設定するのかというケースビデオが印象的でした。

まず、①ビジネス目標や戦略を理解し、学習プログラム(研修など)がどのようにビジネスゴールに貢献するかを明確にすることです。ここを飛ばして、リクエストされた「XX研修」を実施することはNGです。その後に、②「結果としてどうなることがよいのか」を、ラフでよいのでイメージを持つことを勧めていました。

さらに、③適切なビジネスメトリックス(ビジネスバリュー)を選択し、学習プログラムの成果を測定することによって、改善点を特定してアクションプランを策定しましょう。学習プログラムの成果を測定するには、ビジネスメトリックスをラーニングメトリックスに分解して、研修コンテンツとの関連性を持たせることになります。そして、やりっぱなしではなく、④その結果を関係者に報告し、進捗状況や成果を報告するところまでが一サイクルです。

ビジネスメトリックスとは、ビジネスゴールを測定するための指標。例: Increased Customer Net Promoter Score 、 Increased first contact resolution、Reduced rate of call backs in less than 24 hours 
ラーニングメトリックスとは、学習プログラムの効果や成果を測定するために使用される指標であり、学習者の理解度や知識習得度などを評価するためのもの。例: スキルレベル<Customer issue resolution>、Learning effectiveness(例:comprehension, engagement)

現在および将来に必要なスキルを特定する

2日目(5月22日)に参加した「Beyond L&D: Mapping the Future of Skills in the Workplace」では、参加者自身が最近学んだことや、生き残るために必要なスキルはどんなものか?といったことに関してアンケートを取りながらセッションは進行しました。

技術の進化により、職場で必要とされるスキルが変化しています。また、「スキル=何ができるのか」、ということであって知識ではありません。 今後の成功にはデジタルスキルだけでなく、様々なスキルが必要とされています。スキルフレームワークを使用して、現在および将来の求人に必要なスキルを特定し、パーソナライズラーニングを設計することがL&Dプロフェッショナルに求められている役割であろう、という内容でした。

職場で必要とするスキルが変化しているという点については、最終日(5月24日)に参加した「Throwing Out the Business Suits Redefining High-Potential Leadership」においても言及されていました。具体的には、「ハイポテンシャルに求められる特性は、従前から比較すると、個のスキルだけでなく、組織との相互作用や文化への適合性も求められるようになってきた」とのことでした。

ハイブリッドワークの環境づくりを支援する

「Return-to-Office Has Been Messy; Here’s How to Help」では、3つの事実を共有するところからスタートしました。

Leadership set the policy

リーダーが政策を単独で決定すると、過去を過剰に美化する傾向があることや、従業員のニーズや意見を無視することがあるようです。今では当たり前ですが、政策決定には多くのステークホルダーを巻き込むことが重要であることを強調されていました。

The Endowment Effect

また、Endowment Effectという概念についても紹介していました。これは、「人々が所有するものに対して過剰な価値を見出す傾向のこと」を指します。つまり、 従業員は自分たちの職場や仕事に対して強い愛着や所有感を持っており、それらを失うことに不安や不満を感じる可能性があるということです。このような状況では、組織は従業員に変化の意義やメリットを説明し、彼らの懸念や不安を解消する必要があります。従業員に何を得たか、何を失ったか、そして今後どのような可能性があるかを理解してもらうことで、変化への抵抗感を軽減することができるようです。

The Great Mismatch

さらに、組織が持つ目標や価値観と、従業員が求めるもののズレが大きくなると、従業員は不満やストレスを感じ、退職する可能性が高くなります。

上記をふまえたTips

RTO(=Return-to-Office)に関しては、単に「コロナ禍を脱却したから、リモートワークは止めて仕事はオフィスで行う」ものとして、経営層から一方的に「コロナ禍より前の状況に戻そう」とすると、上記の状況を考慮すると、従業員の反発と離職を促すだけです。

新しい方針を全面的に導入する前に、一部の従業員や部署でテストしてみることで、問題点を特定し改善することをお勧めしていました。このようなアプローチは、従業員の不満やストレスを軽減し、組織の生産性や効率性を向上させることができるからです。これは、システムや制度導入の基本なのかもしれません。

L&Dプロフェッショナルができること

こういった状況下において、L&Dプロフェッショナルができることは以下の4つです。

  • 従業員が適切なコミュニケーションスキルを身につけるためのトレーニングやコーチングを提供する
  • 従業員が相互に学び合う機会を提供することで、ソーシャルラーニングを促進させる
  • 同期型(リアルタイム)学習と非同期型(自己学習)学習を組み合わせることで、従業員がより効果的に学ぶことができるようにサポートする
  • 従業員にフィードバックを提供することで、彼らの成長を促進することができる

政策そのものの立案や実施が行える環境づくりといったところにフォーカスしろ、ということだと理解しました。

研修企画やコンテンツデリバリーだけの役割は終わった

参加したいくつかのセッションからも、研修企画やコンテンツデリバリーだけにフォーカスしていればよいというわけではない、ことは明確でした。ビジネスや環境の変化に伴うリスキリングを支援するだけではなく、そもそもどんなスキルが必要なのかを提示し、テクノロジーを活用してスキル習得をどうやって具現化するのかを考えて実践していくことがL&Dプロフェッショナルには求められていることを実感しました。私もそういう仕事にたずさわってみたいと思った次第です。

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