状況によってリーダーシップを使い分ける。SLII®を適用しよう

コンピテンシー
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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1か月くらい前の私の記事で、「では、きちんと意義や目的も共有したにも関わらず、アウトプットが今一つだったときはどうすればよいのか?これは別の機会にしたいと思います。」と記載した件について、今回は取り上げたいと思います。人材開発の分野ではとても有名なSLII®についてです。

目的や意義を明らかにして信頼関係を作ることが、仕事の精度を上げ、過労死も防ぐことである
仕事は一人で完結することは滅多になく、たいていは誰かがやったことを受けて行うものか、自分がやったことを受けて次のプロセスにつながるものが多いです。最近、人事業務についてヒアリングをする機会が多いのです.....

同じことでも、部下の状況によって対応は変える

SLII®は、ケン・ブランチャード(Ken Blanchard)氏によって開発されたリーダーシップ理論です。部下の状況に応じて、上司としてのサポートの仕方も変えていく必要があるという考え方です。

ここでいう「部下の状況」とは、意欲と技能についてです。この組み合わせによって、指示的行動と支援的行動の対応が異なります。部下の状況は以下の4つに分類します。

  • D1:高い意欲はあるが、技能は低い
  • D2:低い意欲で、技能は低~中
  • D3:意欲は変化し、技能は中~高
  • D4:高い意欲で、技能も高い

D1の例としては、新卒社員などがあげられます。また、この状況に応じて、上司のとるべき対応が以下のように異なってきます。

  • S1 指示型:具体的な指示を与え、仕事の達成をきめ細かに管理する。
  • S2 コーチ型:指示を与え、仕事の達成をきめ細かに管理するが、決定されたことも説明し疑問に答えつつ、提案を出してもらうことで前進できるように励ましながら支援する。
  • S3 支援型:仕事の達成に向かって努力を促しつつ、考えを(上司が)あわせて、部下自身が決められるように仕向けていく。
  • S4 委任型:意思決定と問題解決の責任を部下に任せる。

そのため、同じ仕事を依頼・指示をするにしても、実施する部下によってサポートの方法やレベルは変えていく必要があります。これを全て同じ方法で行っていると、ある部下にとっては、仕事のやり方がわからなかったり、上司からの指示内容に不足感を感じさせます。一方、別の部下にとっては、そこまで信用されていないのか?という不信感を持つ可能性があります。

  

同じ部下であっても、内容によって対応は変える

同一人物に対しては常に同じサポート方法やレベルでよいのか?というと、それも異なります。部下の状況(上記のD1~D4)に応じて、対応は変更する必要があります。例えば、あるスタッフは、レポート作成のためのデータ抽出や分析に長けているD4の状況だとします。そのため、上記の業務については、上司はS4の対応を行うことで、うまくいくでしょう。

では、データ分析だけではなく、レポートそのものの作成もやってもらうとした場合はどうでしょう?該当の部下が、今までレポート作成の経験がほとんど無いとしたら、データ分析の時のように委任型で接していると、必要以上に時間がかかったり、あるいはレポート作成が完成できない可能性があります。この場合、同じ人物であっても、上司としての振る舞いは変える必要があり、S2か場合によってはS1の対応をする必要があります。

他人の振る舞いは変えられないが、自分の振る舞いは変えられる

「こういう風に行動しないとだめだ」というように、部下の振る舞いを変えることにフォーカスしている上司は、マネジャーとしての技能は高くないと判断できるでしょう。どちらかといえば、上司の方が部下の状況を鑑みて、対応方法や振る舞いを変えていく必要があります。

とはいえ、部下の方がそれを逆手に取って「自分はやりたいようにやって、あとは上司が全てフォローをすればよい」などと思わせる振る舞いをしたら、これはS1の対応を取るのが適切です。または、こういった振る舞いが、「年次評価」などのフィードバック題材となるでしょう。それでも改善しなければ、さらに別の方法(異動・降格・退職勧告など)といったことも検討せざるを得なくなります。

<2017年1月19日追記>フィードバックを行う際の前提となる、上司としての振る舞い・行動についてはこちらを参照にしてください。

他人の行動や考え方を変えるというのは、並大抵のことではなく、実際にはほとんど無理だと思っています。それよりも、自分の考え方や行動を変えることによって、他人に変化のきっかけを与えることの方がよほど簡単だと思います。

<出典・参考>SLII®の詳細やイベント・公開講座などについては、ブランチャード・ジャパンのサイトをご確認ください。
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