前の記事で「GEとAdobeが年次評価制度を廃止して、業務の振り返りやフィードバックを短期間のサイクルで行っている」ことを取り上げました。
上司がフィードバックを行うということは、その前提として上司と部下のコミュニケーションがきちんと成り立っていることが必要となります。そのコミュニケーションが円滑に行われるためには、上司は部下をしっかりと「観察」している必要もあり、部下は上司に業務上どんなサポートを必要としているのかを伝えるために、自身の業務量やそれに対する到達度合いを、「自分視点」で掌握していることが求められると思っています。
今回は、そういった上司と部下のコミュニケーションの前提となる、「上司としての振る舞い・行動」の中でも経験上、これはやったほうがよいと感じていることを取り上げたいと思います。
”見返り美人”になる
オフィスでの仕事では、パソコンを使うことが多いと思います。部下から話しかけられた時に、目線はパソコンに向かったままで、作業を止めずに話を聞くのは止めましょう。というよりも・・・
部下から呼ばれたらどんな時でも手を止めて話を聞く
ようにしましょう。
部下から声をかける状況をちょっと考えてみましょう。今はタイミングとして支障ないかどうか、といったことなどいろいろと図りながら、思い切って声をかけているかもしれません。それに対して、顔を話者に向けず、PCを操作する手も止めずに対応されたらどうでしょう?あるいは、どうやら間が悪い状況だったのか、「今、ちょっと忙しいから後で!」と上司から返答されたとしたら、どう感じるでしょうか?
こういった対応を上司に取られると、次回から上司に声をかけようと行動に移すための「ハードル」があがってしまう可能性が高いです。そうなると、部下と上司が話をしにくくなってしまう環境がジワジワと形成されてしまうかも・・・。
そのため、まずはどんな状況であっても部下から声をかけられたら、手を止めて話を聞きましょう。もし、それがどうしても難しい状況の時は以下のように答え、かつ、その通りに実践!
今ちょっと手が離せないので、5分後に私から声をかけます!
部下の「ハードル」をあげないためにも、上司側が「ボールを持つ」ような対応を心がけた方がよいです。特に多忙な時期。これは、上司・部下に関係なく、通常のコミュニケーションでも実践すると有益だと思います。
「部下のカルテ」を持つ
フィードバックをする際には、具体例があった方が納得感が高くなります。「いつもタスクの期日を守っていない」と抽象的に言われるよりも、「タスクの期日を守っていなかったことがある。例えばXX社への提案書を作った時に、締め切りの次の日に提出していたことがあった。」と言われた方が腹落ちはします。「いつも」という、人によって基準やとらえ方が異なる抽象的な表現は、フィードバックという状況では却って不満を生み出してしまいます。
部下の言動などを全部覚えていればよいのですが、人間の記憶力には限界があるので、難しいと思います。その時に出てくるのが「カルテ」です。といっても、特別なものではなく、
- 日付
- 具体的な内容・出来事
- 自身(上司)の所感
を記載する程度で十分です。部下毎にファイルを分けるなり、エクセルのシート単位にするのか・・・といった方法は自由です。記録しておくことは、ポジティブな内容も改善を要する内容も両方です。そうすれば、フィードバックを行う段階になってから、それを見返すことで思い出せます。これは部下本人はもちろん、他の方に見せたり共有するものではなく、自分だけが更新・照会するものとしましょう。
ほめ達(ほめる達人)になる
当然ですが、「媚をうる」ということではありません。いつも部下がやっている、ちょっとした良いことを、間髪入れずにその場で称賛するだけで結構です。例えば
- 締め切りはいつも守っているよね
- 会議室の設営準備ありがとう
- 事前に話してくれて助かったよ
といったことです。お世辞を言われると、状況や頻度によっては多少の効果はあるかもしれませんが、長続きはしません。しかし、現実に発生したことを褒められたら決して悪い気はしないでしょう。それだけではなく、部下は「(上司は自分のことを)しっかり見てくれている」ということが認識できます。こういった認識によって、間違いなく目に見えない双方の関係性が良くなります。「空気が変わる」とも言えるかもしれません。
信頼関係があればフィードバックも受け入れられる
こういった上司の行動の積み重ねによって、部下は上司に対して一定(以上)の信頼感を持つでしょう。それなれば、フィードバックもとても簡単になります。ポジティブな内容はもちろん、改善点のフィードバックについても、上司からのコメントを受け入れるだろうし、それをどうフォローしていくのかといったことを一緒に考えて行動に移すこともできるでしょう。上司が、自分は「エライ」人という態度で接するのではなく、きちんと部下と向き合った行動をとっていれば、それに対する部下の行動にも良い影響を与えます。
上司と部下においては、「まずは上司から行動を変える」ことです。「部下がやらないから自分もやらない」という気持ちがちょっとでもあるならば、「上司」の立場は降りた方がよいでしょう。
業務に関連する指示・指導については、部下の状況に応じて振る舞いを使い分けましょう。
この記事の最初の方で記載した、「部下は上司に業務上どんなサポートを必要としているのかを伝えるために、自身の業務量やそれに対する到達度合いを、「自分視点」で掌握していることが求められる」については、別の機会に書こうと思います。
<2017年1月26日追記>上記↑について記事を掲載しました。