研修提供の枠を超え、組織の「意思決定」に寄与する。ATD25から見えた日本企業への3つの示唆

ATD
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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人材開発の領域では、AI活用や学習の業務統合など、新しいテーマについての検討を求められるケースが増えています。一方で、「何から着手すべきか」「どこまで投資すべきか」を判断できず、議論が止まってしまう企業も少なくありません。2025年5月に参加したATD25では、こうしたテーマについて複数のセッションが共通した方向性を示していた点が印象的でした。

人材開発の役割は、従来の研修の企画・提供にとどまらず、不確実な経営環境において意思決定を支える仕組みを整えることへと、その領域を広げています。 ATD25で提示されたグローバルな潮流を、日本の現場で機能する「妥当な解」に翻訳してお届けします。

AI前提で再設計が求められる人材開発

今回のATD25では、AIや生成AIの活用そのものよりも、AIを前提に学習やスキル開発をどのように設計し直すかという議論が多く見られました。単にツールを導入するのではなく、

  • スキルの捉え方をどう変えるか
  • 学習プロセスをどのように再設計するか
  • 業務(実務)との接続をどのように設けるのか

といった、より上流の設計論に関心が移っている印象です。日本企業においてもAI活用の検討は急速に進んでいますが、どの領域から着手するかの設計で悩むケースは多いと感じます。

AIリテラシーは、単なるツール習得ではありません。AIに任せるべき領域を峻別し、人間にしかできない意思決定を最大化させるための、組織の「判断の土台」を作り直すことです。日本企業が悩む「どこから着手すべきか」という問いに対し、まずは業務を「判断が必要かどうか」で仕分ける。この「倍速での仕分け」こそが、AI時代の人事に求められる最初の、そして最大のスキルです。

L&D部門の役割転換

もう一つ強く感じたのは、L&D部門や担当者に求められる役割の変化です。従来のように研修を企画・提供する機能にとどまらず、以下の役割も担っているといえます。

  • 業務(実務)との接続
  • ステークホルダーとの連携
  • スキル戦略への関与

L&D担当者は、もはや研修企画だけを行えばよいというわけではありません。現場の不確実性を「判断可能な形」に仕分け、経営層がYes/Noを言える状態を作るプロジェクトマネジメント力が、これからのL&Dの主戦場になります。

教科書的な「正しい研修」を並べるのではなく、その組織の文脈において妥当な一手を提示する、その胆力がL&Dを信頼のインフラへと押し上げます。L&Dが「ビジネスの現場で何が起きているか」を誰よりも熟知することが、戦略人事の出発点となります。

学習を業務の中に組み込む設計へのシフト

ATD全体を通じて繰り返し語られていたのが、学習を業務の流れの中にどう組み込むかという視点です。研修として切り出して提供するのではなく、

  • 業務プロセスの中で学習が発生する設計
  • パフォーマンス支援との統合
  • 現場での実装を前提とした設計

へと重心が移っています。日本企業では依然として「研修として切り出す」前提が強く、研修設計と業務設計を分けて考えていると効果が出にくい局面に入っていると感じます。学習を業務に組み込む(IN-the-Job)ことは、単なる効率化ではなく「現場で上司と部下が共に成長する対話の機会」をシステムとして埋め込むことです。それが「現場に体温を取り戻す」ことにもつながるでしょう。これがAI時代の人の育て方です。

まとめ

ATD25を通じて感じたのは、人材開発の役割が「研修の提供」から「事業成果につながる仕組みの設計」へと確実にシフトしていることでした。一方で、これらの取り組みをそのまま日本企業に適用することは容易ではなく、

  • どこから着手するか
  • 何を優先するか
  • L&D部門の役割をどう再定義するか

といった点で悩むケースが多いと感じています。最近は、AI活用を含めた人材開発施策の優先順位づけや、L&D部門の役割整理についてのご相談をいただきつつあります。

弊社の人事プロジェクト支援はこちらにまとめています。

技術を使いこなし、仕組みを最短距離で構築し、最終的に人が輝く組織を作るための判断の拠り所としての支援を続けていきます。

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