オフィスの再定義によって東京東部の空きビルが増えているかもしれない

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Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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テレワークに関してはここでも何度か取り上げたことがありますが、あくまでも「働き方の1つ」という視点からでした。オフィス勤務が軸としてあり、それ以外の方法として存在する在宅勤務やサテライトオフィスあるいはカフェなど全く別の場所からリモート勤務することによるメリットやデメリットについては、既に実感されている方も多いと思います。

コロナ禍の初期段階で、スタートアップなど会社規模が大きくない企業を中心に、「オフィス全廃+原則リモートワーク」とするため、契約していたオフィスを解約するケースが見られました。そういった企業においては、今でもその状況を継続している企業もあれば、「やはりオフィスは必要」ということで再度オフィスを設けるケースもあるようです。同じことを選択したのに、その後の展開が真逆となっているのは、なぜでしょうか?

さらに、大企業の場合はどういう状況でしょうか?

大企業におけるテレワーク

規模が小さい会社のように、(諸々の調整や検討のため)オフィス全撤廃といった対応は難しいとはいえ、人が密集することを避けるために、オフィスワーク職種を中心に在宅勤務を推奨した企業が多く、今でもその施策が継続されているところがほとんどでしょう。

具体的には「オフィスへの出勤は週2日まで」「テレワークを原則とする」「オフィスへの出勤は全社員の2割までの人数に制限」といった方針を立てつつ、オフィスに来なくても業務ができるように業務プロセスや手法を見直すといったことです。

在宅勤務やテレワーク制度は設けていたものの、メインの勤務方法ではなく、補足ツールの位置づけだったため、社外から社内システムへのアクセス数が想定よりも過多となることもあったようです。それが原因で、社外から社内システムにアクセスできない・つながっても速度が遅いといった状況のため、「社内システムにアクセスできない(しにくい)から、オフィスに行く」といったことも(笑)・・・。

統合したオフィスの見直し

コロナ禍前においては、複数ビルにまたがるオフィスや、グループ会社が各地に点在することによる非効率さを解決するため、自社ビル建築あるいは一棟丸ごと借り上げるといった形で、1か所にオフィスを統合するケースが見られました。また、そういった場合、都心よりも「電車で10数分ほど」離れたエリアが選ばれることもありました。

そういった企業がコロナ禍にテレワークを中心とした勤務体制が主になったことにより、「そこまで広いオフィスは不要」と判断したのか、オフィスを縮小・移転するケースが増えています。

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DeNA社のように移転の際に、WeWorkをメインにすることにより機動性を持たせるケースもあります。また、日本HP社とリクシル社は、東京都江東区大島エリアに隣り合わせで本社ビルがありますが、どちらも移転されたようです。

オフィス定義をアップデート

ここで重要なことは、上記にあげた企業においては、「オフィス」を再定義している(だろう)ということだと思います。

今までは、「オフィス=社員がそこに集って勤務する場所」であったのですが、勤務そのものはオフィス以外でも可能となってきました。そうなると、オフィスで勤務する必要があるのはどういう時なのか、どんな目的なのか、といったことを改めて考え、それに応じたオフィスの在り方を考える機会が生じていると言えます。

上述した、スタートアップ企業における「オフィス全廃→再度オフィスを設ける、あるいは、オフィスゼロの継続」という動向に関しても、同様です。その企業における「オフィス」を再定義した結果にすぎません。また、スタートアップ企業の場合は、組織規模の推移や企業としての成長段階によって、「再定義した結果」をさらに変えていく必要もあるでしょう。

ABWの適用

オフィスの再定義は、すなわち、ワークスタイルについて考えることにもつながります。そのため、ABW(Activity Based Working)が適用できると思います。ABWとは、働く場所や時間を、それぞれの仕事(活動)に合わせて自律的に選べるワークスタイルのことです。ABWにおいては、「オフィス」についても検討しています。

*ABWの詳細は、別にコラム記事を寄稿しているのでそちらを参考にしてください。

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企業に求められていること

「都心のオフィス空室率がXXヶ月連続で上昇」といったニュースをみかけると、「オフィスを縮小してテレワーク中心にすべきなのか」「オフィスはいよいよ不要になったのか」と一足飛びに考えがちですが、それは企業によって全く異なってきます。アップル社は「(文化と未来にとって不可欠なため)週3日の出社を求める」とコメントを出しています。今まであげていた例とは、ほぼ真逆の内容です。

ただ間違いなく言えることは、「オフィス=社員がそこに集って勤務する場所」という定義しかなかった時代は終わり、オフィスで社員あるいはその関係者がどんな経験をしてほしいのかをデザインすることが求められていることです。

<参考>オフィスの縮小移転のメリットや留意すべき点について、別コラム記事に寄稿しています

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