人事関連資格が乱立している?その種類と活用方法の提案

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この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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どの職種にたずさわっていても、専門性やスキルを高めることを目的に資格を取得することがあります。人事プロフェッショナルに関しても、それは同様です。しかし、人事担当者が取得を想定している資格(以下、「人事関連資格」と記載)に関して、近年色々な運用団体によって乱立しているように見えます。少なくとも私はそのように認識しています。

どんな資格があるのかを整理しつつ、人事関連資格を新たに構築し、運用することのメリットとデメリットを分析した上で、人事担当者はこういった資格とどのように「付き合えば」よいのかを考えてみたいと思います。

人事領域別の資格の種類と特徴

人事関連資格には、様々なものがあるため、人事領域(採用、人材開発、労務、給与、人事企画、人事システム)毎にわけて資格を紹介します。

資格によっては複数領域にまたがったものもあります。今回は便宜上、いずれかの領域に分類しました。(記載したもの以外の人事関連資格があればそっとお知らせください。)

採用領域

応募者のニーズや市場動向に対応できる力や、採用活動の効率化や最適化を図ることが採用業務では求められているため、それらに関する内容についての理解を問うものとなってい(るようです)ます。

  • 人材測定コンサルタント 採用分野:採用業務に関する専門知識やスキルを認定する資格で、認定講座を受講し、認定試験に合格すると資格が取得できる
  • 外国人雇用管理主任者:外国人雇用についての専門知識を身につけ、外国人雇用に関するサポートができる人材育成を目的とした民間資格

人材開発領域

人材育成や教育に関する知識やスキルを証明する資格で代表的なものとしては、ATD(Association for Talent Development)が実施している2つの資格があげられます。

いずれも人材・組織開発担当者が身に付けるべきコンピテンシーをベースにしています。上記以外に、以下の2つがあげられます。

  • キャリアコンサルタント:ビジネスパーソンのキャリア形成を支援する国家資格。社員の適性やキャリアプランの明確化、必要な知識・資格の取得、仕事選択のアドバイスなどに役立つ。
  • 産業カウンセラー:職場の人間関係やストレスなどに悩む人のカウンセリング・ケアにフォーカスした民間資格。

労務領域

労働法や社会保険制度などに関する知識やスキルを証明する資格として位置付けられています。国家資格の社会保険労務士以外に、以下のようなものがあります。法律がベースとなっているためか、複数団体が類似の資格を提供しています。

  • メンタルヘルス・マネジメント検定:労働者の心の健康を守るのに役立つ民間資格で、厚生労働省のメンタルヘルス指針に基づいた検定試験となっている
  • 労働時間適正管理者検定:労働時間の管理に関する知識とスキルを証明する民間資格。労働時間の法令や制度、労働時間の適正な管理方法、労働時間の改善策などが学習範囲
  • 労働法務士:労働法に関する知識と実務能力を証明する民間資格。労働法基礎だけではなく、労働契約、労働条件、労働紛争、労働安全衛生など、労働法に関する幅広い分野が対象
  • 労務管理士:企業内部の労働関係当事者が労働基準法や労務管理に関する専門的知識を習得し、人事・労務分野における、より高度な専門的職務能力を高めることを目的としている民間資格
  • 人事総務スキルアップ検定:人事、労務管理、年金、法律関連の専門知識を身につけることを目的とした資格
  • 人事労務マイスター検定 社会保険:入社から退職までの間に起きるさまざまなライフイベントにまつわる社会保険・雇用保険に関する知識を身につけることができる

給与領域

給与計算や給与管理に関する知識やスキルを証明する資格は、法律をベースとしているのでたくさんあるのかと思いきや、確認できたの一つのみでした。

  • 給与計算実務能力検定:企業や組織に不可欠な給与計算業務についてその知識や遂行能力を判定し、実務能力への確かな評価を与える検定試験

人事企画領域

人事企画領域における資格に関しては、それだけに特化したものではありませんが、このようなものがあります。

人事システム・データ領域

人事システム領域では、SAP社などシステムベンダーによる「システム導入コンサルタント」のような資格は多くあります。それら以外で、かつ、データ領域まで範囲を広げると以下のようなものがあげられます。

人事関連資格を構築・運用することのメリット

資格を取得する側ではなく、人事関連資格を新たに構築し、運用することのメリットを考えてみたいと思います。

 マーケットニーズに応えられる

マーケットニーズに応えることができます。既存の人事関連資格は、人事の専門性やスキルを高めるために必要なものである一方、既存の資格ではカバーできないニーズや課題があるかもしれません。

例えば、人事情報のデジタル化や人事データ分析・活用にフォーカスした「人事データ保護士」があげられます。これらのニーズや課題に対応し、人事担当者の需要を満たすために、新たな資格を構築・運用することに期待が集まる可能性があります。

信頼性・価値を高められる

資格を運用することを通して、その運用団体の信頼性や価値を高めることができます。既存の資格の中には、適切な基準や審査が行われずに認定されることがあり、資格およびその運用団体の信頼性や価値が低下する可能性があります。

新たな資格を構築・運用する際に、厳格な基準や審査を設けることで、資格そのものやその運用団体の信頼性や価値を高めることができます。また、資格の更新や継続教育などの制度も併せて取り入れることで、資格の有効性を保つことができます。

安定収益につながる

資格を創設し運用することによって、「試験」「関連研修」「更新」といった機会が生じ、それは運用団体の利益につながります。これが、一定期間内において絶えず一定数発生するならば、安定した収益になるでしょう。

人事関連資格を構築・運用することのデメリット

反対に、人事関連資格を新たに構築し、運用することのデメリットを考えてみたいと思います。

コスト・時間がかかる

資格の構築や運用には多大なコストや時間がかかります。まず、資格の目的や内容、基準や審査、更新や継続教育などの制度を設計・実施するには、多くの人材や資金などのリソースが必要となります。また、構築して実運用に入ってからは、常にその有用性の評価や内容のブラッシュアップなども発生します。

こういった「投資活動」が、資格の価値や効果に見合うものであるかどうかを慎重に検討する必要があります。

認知に困難が伴う

資格の普及や認知には困難が伴います。資格を新たに構築し、運用することで、マーケットニーズに応えることができる一方、それだけで、資格が自然に普及されたり認知されるとは限りません。

資格を普及・認知させるためには、資格のメリットや特徴を広く周知し、資格の取得や活用を促進する必要があります。つまり、広報やマーケティング活動が必須となります。具体的には、資格の品質や効果を検証し、公開することです。

既存資格との競争や対立が生じる

資格の競争や対立が生じる可能性があります。資格を新たに構築し、運用することで、マーケットにおける競争力を高めることができますが、それと同時に、既存の資格との競争や対立が生じる可能性があります。場合によっては、資格の価値や効果が低下することがあります。

また、資格の競争や対立は、人事担当者の資格選択や取得に迷いや負担を与えることがあります。資格の競争や対立を防ぐためには、(場合によっては運用団体の枠組みをこえた)資格の統合や再編成を促進する必要があります。

人事担当者は業務の体系理解に活用すべき

資格を新たに構築する運用団体側のメリット・デメリットを理解した上で、人事担当者はこういった資格とどのように「対峙」すればよいでしょうか?

「この資格が無いと業務にたずさわれない」というものではないでしょう。それゆえ、「資格を取得すること」だけを目的にするのは避けるべきです。重要なのは、資格を取得することではなく、その活動を通して得た知識・スキルなどを、どのようにして業務に活かすのかということだからです。さらに広げて言えば、「どのように社会に貢献するのか」といったことの方が重要です。そのため、資格取得そのものを体系的に学ぶためのツールとして活用することをお勧めします。

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