何度か確定拠出年金を「持ち歩いた」経験もふまえると、iDeCo(個人型確定拠出)は通常の金融商品よりも”使える”と思う

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この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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来月(2017年1月)から個人向け確定拠出年金に加入できる対象者が、大幅に広まるのはご存知でしょうか?これは、政府からのサイレントメッセージではないかと思っています。すなわち、老後の資金形成は企業の退職金などに依存するのではなく、自身で計画的に積み立てて運用していきましょう、ということでしょう。

今までは個人型はかなり限定されていた

個人型確定拠出年金に加入できる方は、かなり限定されていました。そもそも、勤務している企業で確定拠出年金制度を導入している場合は、個人型年金には加入はできませんでした。公務員や主婦(主夫)についてはそもそも対象外。そのため、個人型確定拠出年金に加入できる人は・・・

  • 自営業者(私のようなフリーランスも含まれます)
  • 企業型確定拠出年金の無い企業で勤務している

2016年12月時点では、この2つのケースのみでした。イメージとしては、転職などによって所属企業が変わっても継続して企業型確定拠出年金を運用していくことを前提としており、そのケースからあぶれてしまう方々を「救済するためのもの=個人型確定拠出年金」というものだったと思います。

私も確定拠出年金を「持ち歩いて」います

実は私は、「確定拠出年金」を何度も「持ち歩いて」運用しているケースです。

  1. 前の前の会社にて初めて確定拠出年金が導入され、企業型年金の加入者として運用開始。
  2. 前の会社に転職。しかしその当時、前の会社は確定拠出年金が導入されていなかったので、個人型確定拠出年金の加入者として、「1」の年金を移管して継続運用。
  3. 前の会社で企業型確定拠年金が導入されたので、「2」を移管して企業型年金の加入者として継続運用。
  4. 前の会社を退職して独立。個人型確定拠出年金の加入者として「3」を移管して、掛金の拠出を行い、現在に至る。

つまり、企業型→個人型→企業型→個人型と3回も移管手続きを行なって年金を「持ち歩いて」おります。移管手続きは書類を取り寄せて、必要事項を記載して身分証明書のコピーなどを添付して返送するだけです。金融商品の選択は、いつでもWebサイト上で変更できる一方、あまり選択肢が多すぎても迷うだけなので、ある程度のラインナップがあれば十分かと思います。

ただ、手続きに時間がかかります。金融機関に書類を返送してから2ヶ月近く経過してから、手続き完了ということがほとんどです。ここまで時間がかかるのでは、どうしてでしょうかね(笑)?

iDeCo(個人型確定拠出)は自営業者にとってはメリットの方が多い

老後の資金を運用するためのものである確定拠出年金。これを使って運用するように仕向けられた「仕掛け≒メリット」が多くあります。

積み立て時

まず、掛金に応じて税金(所得税)が安くなる所得控除を受けることができます。年末調整や確定申告にて、掛金の全てを所得から差し引いた金額を元に所得税額が算出されるということです。そのため、確定拠出年金以外の別の手法で運用していても、それによって所得税が減るということは全くないのですが、この確定拠出年金だと、それによって「節税」が可能となります。

運用時

通常、投資信託などを運用して、それが値上がりして売却益が発生した場合は、その売却益に対して税金がかかります。だいたい約20%くらいの税率です。しかし、確定拠出年金の場合は、それがゼロ=免税となります。

受け取り時

60歳から70歳までの間に、①一時金 ②年金 ③一時金と年金の併用のいずれかで受け取りが開始できる上、一時金の場合は退職金、年金の場合は公的年金と同じ控除対象となります。

自営業者の場合は、月額で68,000円まで積み立てることができます。つまり年間816,000円までは売上や報酬から控除することができます。これは、かなりの節税になるでしょう。

確定拠出年金制度の制約

メリットが多い確定拠出年金ですが、制約事項もいくつかあります。まず、「60歳までは現金化できない」ことです。要するに途中解約ができないことと同義です。そのため、運用する資金は、生活資金なども考慮した上で決定する必要があります。私も、月額68,000円まで積み立てられるものの、現時点ではそこまでは積み立てておらず、この辺は今後の事業状況も考慮していきたいと思っています。

また、投資信託などの元本保証型ではない商品にて運用する場合は、給付金が掛け金を下回る可能性もあります。

口座管理に手数料がかかることも考慮しましょう。それほどは高くないです。金融機関に依存しますが、加入時に数千円程度+毎月口座管理手数料がかかります。

企業型確定拠出年金に加入している会社員にできること

勤めている企業で既に確定拠出年金に入っている方の場合、自身でできることはなんでしょうか?

まず、毎月の拠出金額を確認しましょう。企業によっては、「基本給のXXパーセント」というように決められているところもあれば、自分である程度の範囲で設定できるところもあります。

次に、自身で掛金が追加できるかどうかを確認しましょう。企業から拠出される金額以外に、給与控除によって掛金を「上乗せ」することができる企業も増えつつあります。これによって、所得税の節税につながるのは上記に記載した通りです。もちろん、給与という性質上、生活などに支障ない範囲で控除金額は設定しましょう。

何を選択してよいのかわからないし、面倒くさいから、全て定期預金にしている、という社員もいらっしゃるようです。しかし、企業型確定拠出年金の場合は、そもそもの拠出金が会社が出してくれており、それを使ってあれこれと運用できるというのは、なかなかいい機会だと思います。

この辺は、全て人事部門の担当領域です。

確定拠出年金を推す理由

いろいろな金融商品が用意されており、それらをいろいろと組み合わせて運用できるのは、他ではあまり無いと思っています。個別に国内株式、外国株式、新興国投資信託などの金融商品を選んで運用するのはかなり煩雑です。それを一つの口座で行えるのは、便利だと思います。また、上記に記載した売却益に税がかからないというのは、(支給される時期は60歳になってからとはいえ)なかなか魅力的な制度です。

確定拠出年金は60歳まで運用する=長期運用が前提となっているため、多少ハイリスクな金融商品を選択したとしても、長期運用によって損する可能性が低くなり最終的には得することの方が多いようです。私も、リーマンショック時に運用していた頃は、かなりの運用損益が出ていましたが、今ではそれも持ち直しています。

来月からは、企業型確定拠出年金が導入されている会社員、公務員、主婦(主夫)も個人型確定拠出年金に加入できるようになります。毎月の運用金額も(変更回数に制限はあるものの)増減できるので、まずは少額からでもスタートしてみることをお勧めします。

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