採用は人事部門だけで行うものではなく、配属部門だけで行うものでもない

採用
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

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一定以上の規模の企業における採用に関する問題は、「採用を人事部門に丸投げする」「配属部門(社員が入社してから所属する予定の部門)がルール度外視で採用してしまう」という2つに(若干乱暴ですが)分類できるのではないかと思います。今回は、具体的にはどんなケースなのか、そしてどのように対処すればよいのかを考えてみたいと思います。

ケース1:人事部門に丸投げし、結果として採用できない

想定される状況

採用をすべて人事部門に丸投げする会社にて起こりえる内容を、若干デフォルメしつつ書き起こしました。

「社員の採用は人事部門が責任をもって行うべき」という考えが社内に浸透しているため、要員不足だと認識した時点で人事部門に「外部からの採用」を依頼する。ただし、その部門における業務上の役割やどんな人を採用したいのかといった要件に関しては、ほとんど出てこないか、とても曖昧であることが多い。(例:XXさんみたいな人、とか、英語ができる30代など)

そのため、人事部門でも配属部門にヒアリングをかけたりして、要件を明確にしようと試みるが、そもそもの要件がぼやっとしているのでその試みも徒労に終わる。自社採用サイトに社員募集は掲示しているが、「総合職」の募集と記載されているだけで、どんな経歴をもった人をターゲットにしており、採用されるとどんな業務につくのかが伝わりにくいため、外部からの応募はほとんど無い。

リファラル採用は制度として存在はしているが、人事部門以外に所属している社員は、自分たちには関係ないことだと思っているので、全く関心が無い。

一方、転職エージェントなどには何らかの要件を伝えないと、サーチ(紹介)してもらえないので、人事部門がイメージを膨らませて「それっぽい人材募集要件」を作成する。転職エージェントから紹介された候補者と面接を行った配属部門は、「イメージと合っていない」「スキルミスマッチだ」など、今一つ不明瞭なフィードバックをする。仮に不明瞭なフィードバックを考慮しつつ、「それっぽい人材」を面接に呼べたとしても、もともとの要件が曖昧なので、結局、「イメージと合っていない」「スキルミスマッチだ」といったフィードバックに終始しがちである。

そのうち、「人事部門が採用できないから、業務がまわらなくなっている」といったことを配属部門のマネージャークラスが発言するようになり、そのコメントだけがエスカレーションされ、「人事部門による採用が滞っている」といった、実際とは異なる問題点が経営層に提議される。

対策案

採用業務における人事部門と配属部門における役割を定義し、それを浸透させることが最初だと思っています。具体的には、人事部門は「採用プロセスの定義と運用、適切な採用チャネルの選定、転職エージェント管理など」に責任を持ち、配属部門は「人材募集要件の定義、候補者の選定・フィードバックなど」が主な役割になります。候補者との関係構築は、直接のやり取りを行う人や面接を行う人が担うべきことなので、結果として人事部門・配属部門の両方にあるでしょう。

会社のトップから「採用の重要性」についてメッセージを出すことは有益です。採用は人事業務の一つですが、限りなくマーケティング活動に近いというかマーケティングそのものです。

また、採用面談において候補者に確認すべきこと・宗教や家族のことなど聞いてはいけないことがあります。人材募集要件に何を記載すべきなのか、どうやって要件を抽出するのかといったことも知っておくべきことでしょう。そのため、配属部門にて採用に関わる方や面接にたずさわる方に対して、採用関連の研修を実施することも1つの案として検討余地があります。

ケース2:配属部門がルール度外視で採用し、しかも定着しない

想定される状況

次に、ケース1とは全く反対に、採用に関して配属部門(社員が入社してから所属する予定の部門)が「自主的」にほとんどすべてを行ってしまい、人事部門に全く情報が入ってこない例です。

複数の事業展開をしている会社や部門によって業務内容が全く異なる会社に多いケース。「必要な人員はそれぞれの部門で調達する」「部門間の”壁”が厚い」といった組織風土が定着している会社のため、自部門以外のことはほとんど知らない社員が多い。外部採用と社内異動は、ほとんど同義にとらえており、実際に社内異動であっても部門をまたがる異動の場合、(役職やグレードが同じだとしても)処遇が大きく変わることもある。

採用に関しても「部門裁量」の名のもと、それぞれが独自に行っているため、1つの転職エージェントに部門単位で複数契約が存在していることが多い。採用プロセス(募集・面接など)に関しても部門単位でおこなっている。人事部門には入社手続きを行ってもらうために、「来月からXXという人が、YYマネージャーとして入社する」という情報が比較的直前に共有される。

内定者と処遇面の交渉が行われた後に、上記の情報共有がされるため、同じマネージャーのポジションにも関わらず、部門が異なると理論年収が大きく異なる(場合によっては1つ上(下)のグレードと同等)といったことが判明する。その段階だと、雇用契約書を締結する前だとしても、内定者は「その条件」で承諾しているため、給与などの処遇調整がほぼできない。

配属部門による面接にて、候補者の職務経歴や実績だけで選別する傾向が高い。そのため、部長ポジションなのに管理職として経験が不足している、あるいは管理職ポジションとして不適切な候補者を採用してしまい、入社後に諸々のトラブルの原因になりやすい。結果として、採用された社員が定着しない。

対策案

採用業務における人事部門と採用部門における役割を定義し、それを浸透させるという点についてはケース1と同じだと思います。ただ、このケースの場合は既に「自走」しているので、改めて定義するというよりも、人事部門が面接に同席する、あるいは1次面接を担当するといったような「人事部門の関わり」を設けることが先決です。

また、人員は部門内だけではないことを理解し、それによるメリットを享受できるようにするために、「社内での後継者育成を全社単位で実施する」、「公募制による社内異動の仕組みを導入し運用する」といった「全社レベル」の施策を人事部門が音頭をとって遂行することが有益です。

一緒に考えましょう!

採用の役割認識と、それに伴って発生する「ありがち」な状況とその対策例をご紹介しました。この記事を読んだだけで独力で対応できるとは思えない・・・という方は、サービスメニューも参考にして下さい。また、どうすればよいのか改めて相談に乗ってほしいという場合は、お問い合わせください。

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