人事評価制度の運用に失敗しないためにはどうすればよいのか?陥りやすい例と対策

人事制度
この記事を書いた人
Nagami@Aldoni Inc.

事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして独立。人事領域全般のコンサルティングを主な事業としているアルドーニ株式会社の代表。

ブックマーク・フォローしませんか?

人事評価制度は導入すれば終わりではありません。むしろ、そこからがスタートとも言えます。2021年8月に株式会社識学が行った「人事評価の“モヤモヤ”に関する調査」によると、

自社の人事評価に不満を感じる要因は「評価の基準が不明確」が圧倒的多数であること、また人事評価に不満を感じる方の約6割が「人事評価の結果が給与や待遇にどのように反映されるか知らない」など、人事評価制度そのものが不明確、もしくは明示されていないために不満が生まれている

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000029010.html

という結果が出ています。人事評価制度は、社内人材の育成手段として位置付けられているにも関わらず、制度の内容や運用状況によっては、退職者の増加や人材配置におけるミスマッチを引き起こす可能性があります。

今回は、人事評価制度の運用における陥りやすい失敗と対策、について取り上げます。

適切に評価されていない

難易度が高い目標を立ててチャレンジした結果、目標に到達したとはいえないものの、少なくとも及第点だったにも関わらず、「成果主義という名の結果主義」によって、成果を必要以上に重視して評価を大きく下げるようなことがあると、社員は「適切に評価されていない」と感じるでしょう。

結果だけではなく現状から鑑みてどの程度高い目標にチャレンジしたのか、そして、それに対してどのように行動して、どの程度達成したのかという過程について評価しましょう。結果に必要上にこだわって評価すると、社員のモチベーションが下がるだけではなく、「チャレンジングなこと」にたずさわろうとしなくなります。

全く目標に到達できなかった=目標そのものが高すぎる場合は、その設定した目標が不適切だったとも考えられます。本来は、期初の目標設定や中間レビュー段階で上長とすりあわせをすべきです。

社員に対して、実力や能力より少し高い目標を設定することを求めるならば、それに対して上長がどのように評価すべきなのかといったことは、研修などを行って周知徹底させないといけません。こういった評価者のふるまいについては、定期的な啓蒙が欠かせません。

実務と切り離して運用されている

期初に目標設定を行い、期中に目標に対する進捗やフォローを適宜おこないつつ、期末にその目標の達成度合いを評価する、というのが人事評価制度にて行うべきことです。それにもかかわらず、期末になってから慌てて期中に行ったことを元に、逆算して目標を「設定」するケースがみられることがあります。

これは、「人事が(うるさく)言うから対応している」という意識が強く定着している表れとも言えます。この場合は、そもそも「なぜ人事評価制度を実施するのか」といった目的やその効果について、何度でも啓蒙することが求められます。また、それでも行動に改善が見られない上長に関しては、評価者の役割を外すことも検討すべきでしょう。

評価者による不適切な振る舞いがある

評価者が不適切な振る舞いを行っていることがあります。4つの行動例を記載します。

ハロー効果

ひとつの事が良い(悪い)と、全てが良く(悪く)見えてしまうことを、「ハロー効果」といいます。例えば、プロ野球選手は野球に関しては非凡なスキルを有していると言えますが、すべての面に関して非凡な能力が備わっているというわけではありません。それにもかかわらず、「プロ野球選手=全知全能」と見てしまうことです。

ビジネスにおいても、「ある特定のプロジェクトを成功に導いた」ことと、その人の全ての業績が称賛されるものかどうかは別です。人事評価に関しては「具体的な行動に基づいて評価」し、「偏見や好き嫌いでは評価しない」ことが重要です。

中心化・極端化傾向

中心化傾向とは、実際には差があるにもかかわらず、評価を真ん中に寄せて「普通」として評価してしまう傾向のことです。これは評価者が優劣をつけることに自信がない、あるいは、被評価者を適切に観察・分析できていないので、優劣をつけることができないときに起きやすいです。また、それとは反対に、評価が平均化してしまうことを危惧して必要以上に差をつけてしまうことを極端化といいます。

評価基準と定義について十分に理解しつつ、被評価者とのオープンな人間関係を構築することが求められます。また、評価期間の終わりごろに評価者が変わってしまうことを避けるようにしましょう。

論理的誤差

評価者が考えすぎることによって、関連がありそうな評価項目に対して事実ではなく推論にもとづいて評価してしまうことを論理的誤差といいます。例えば、「コミュニケーション」の能力が高いから、「リーダーシップ」も取れていたはずであるといったようなケースです。

これを避けるためには、想像や推測による行為を評価プロセスから取り除き、なぜこのような評価結果にしたのかを事実に基づいて説明できるようにすることを評価者は心がけるべきです。

厳格化・寛大化傾向

厳格化傾向とは、評価者が仕事ができるタイプであったり性格が厳格であるため、自分基準でミスなどのマイナス面ばかりに着目してしまうことから、評価基準を本来以上に高く設定していることから発生します。反対に、寛大化傾向は、被評価者からの反発を恐れたり、フィードバックの煩雑さを避けるために、甘めの評価になることです。

絶対基準であることを意識し、被評価者の行動を常に観察しておくだけではなく、目標設定面談を行って評価基準設定について相互確認することが肝要です。

一緒に考えましょう!

人事評価制度の運用にて陥りがちなケースとその対応策についてご理解いただけましたでしょうか?でも、この記事を読んだだけで独力で対応できるとは思えない・・・という方は、サービスメニューも参考にしていただくか、お問い合わせください!

タイトルとURLをコピーしました